菅浩江『メルサスの少年』
2005-11-27 23:16
菅浩江初期のファンタジー長編で星雲賞を受賞した『メルサスの少年―「螺旋の街」の物語』。1991年の作品です。ファンタジーといっても読み進めば明らかになるように、SF 的なしっかりとした土台の上に構築されており、ライトノベルとは一線を画しています。
大人になろうと背伸びする少年が、大人の汚さをしりながら、悲しみを乗り越えて大人になっていく様は、涙を誘います。何度読んでも胸を打たれる感動的な作品です。クライマックスに向けての盛り上がりも素晴らしい作品です。
主人公の少年が少女と出会い、心を通わせていく様や、階層的な街の構造などは、宮崎駿の天空の城ラピュタに共通する側面もあり、初期宮崎映画が好きな人にもお勧めできます。
惜しむらくは、草彅琢仁氏による神秘的な表紙イラストが印象的な新潮文庫版は、すでに絶版になっています。その後、徳間デュアル文庫から復刊されましたが、イラストレーターが変わっており、魅力が半減してしまっています。表紙だけでなく、本文イラスト、章扉のイラストも草彅氏です。草彅琢仁氏のイラストに惹かれる人ならば、ぜひ古本で新潮文庫版を手に入れましょう。
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