北野武監督作品『座頭市』
北野武監督の『座頭市』が第60回ベネチア国際映画祭で監督賞を受賞しました。座頭市といえば勝新太郎の十八番ですが、それを北野武がどう料理するか、気になっていました。といっても勝新の座頭市を真剣に観た記憶はないのですが。
さて、劇場で観てきましたが、とても面白かったです。
戦いのシーンにはハリウッド映画のような「来るぞ、来るぞ、来たー」というような「溜め」がなく、速いテンポで勝負が決します。時にあっけないまでの戦闘シーンは、『HANA-BI』『BROTHER』などの北野映画独特のカタルシスと言ってよいでしょう。斬り方や、抜刀シーンなども幾通りも考えてあって飽きさせません。
ただ、R-15 指定になっているように、刀で切られて血しぶきが派手に飛び散ったりするので、血が嫌いな向きにはオススメできませんが。
今までの北野映画と違うのは、ずばりカメラワークでしょう。クレーンカメラや複数台のカメラを利用しての撮影が導入されています。テンポの良い展開を演出するのに役立っているのがわかります。
また前作『Dolls』は鮮やかな色調でしたが、今回は全体的に沈んだトーンの色調になっています。なんでも銀残しという現像処理の技法だそうですが、キタノブルーとも違う渋い色合いになっています。
そして、コントが随所に入り、殺伐とした雰囲気の中にも笑いを誘う工夫が見られます。ラストシーンのタップダンスには、賛否両論あるようですが、私は「まああってもいいんじゃないの」という気持ちです。そもそも勝新座頭市の時から、時代考証なんて無さそうだし。日本より海外でウケそうな感じもしますが、外人はタップダンスと時代劇のミスマッチをわかってくれるのでしょうか。
全体としては、速いテンポで殺伐としたシーンと、コント、タップダンスで、バランスのとれたエンターテイメント映画に仕上がっているといえます。テレビの時代劇とも違うし、ハリウッド映画とも違う感覚が味わえますので、是非一度ご覧になってはいかがでしょうか。
追記 (2004-01-09)
座頭市の DVDは 3月発売で予約受付中が開始されています。
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