『ラストサムライ』

2004-1-7 11:06
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ハリウッドが日本を題材にした映画を作ったということで『パール・ハーバー』のような時代考証が滅茶苦茶な映画を想像していたのですが、観たところ意外としっかりした作りでした。もちろん細かい点ではつっこみどころ満載なのですが、トム・クルーズをはじめとするスタッフがかなり入念に幕末の日本について勉強した成果は出ているといえましょう。

感心したのは主演のトム・クルーズが、アル中だったり、真田広之に木刀で打たれて鼻血を出したり、泥水まみれになったりとかなりに汚れ役を引き受けている点です。これだけでも彼の本気度が伝わってきます。なにしろ『ミッション・インポッシブル』などの映画では彼は少しも汚れませんでしたから(笑)

さて、この映画では勝元を演じる渡辺謙が光ります。不自然なまでに英語に堪能な点を除いては、非常に格好いいです。逆に真田広之は台詞も少なく、一流俳優をもったいない使い方しているなと感じました。

先述したように、細かい突っ込みどころはたくさんあります。

「勝元ほどの実力のある侍が、なぜ冬に雪で閉ざされるような山村に住んでいるのか」とか「横浜の近くにそんな雪で閉ざされる山村があるのか」とか「トム・クルーズは終盤に初めて鎧をつけるけどどうしてあんな軽快に動けるのか」とか「あの不自然な鳥居の意味は何?」とか「あの不自然な富士山の大きさは何?」とか、「明治新政府はどうして忍者を使うのか」とか、「どうしてみんな兜を脱いで戦っているのか(俳優の顔が見えなくなるからでしょうけど)」とか。

いや、まだたくさんありますが、ハリウッドが作ったことを考えれば、そして武士道とトム・クルーズを中心に据えていることからすれば限界まで頑張ったと言えるでしょう。

特に一番不自然なのは、幕末の日本に勝元のような戦国武将はいないだろうと。それに幕末だったら鉄砲ぐらい使うだろうに。

しかし明治天皇を弱々しい傀儡の人間として描いているあたりはさすがだと感じます。これは日本映画や大河ドラマでは到底真似できないでしょう。

またアメリカ映画には珍しく、近代兵器を輸出して儲けようとするアメリカ社会の構造を浮き彫りしています。批判という点ではイマイチですが、アメリカが昔から「戦争を輸出して儲ける」体質であることが感じとれる点でいい映画だと思います。

アメリカに比べ日本が格好良く描かれすぎているせいか、産経新聞(共同通信)の記事によれば、この映画はハリウッドでは厳しい評価をされているとか。

その理由の一つとして「武士階級を美化しすぎている」というのがあります。確かにこの映画は武士道を美化していますが、NHKの大河ドラマに比べたらかなりマシだといえます。大河ドラマは大量虐殺をした戦国武将でさえ、英雄として美化しているのですから。

それに、『ラストサムライ』は武士道を手放しで絶賛しているわけではないと感じます。その理由として、武士道を貫いた勝元達は新兵器の前にあっけなく死んでいきました。
しかし武士道と欧米の感覚の両方を身につけたトム・クルーズだけが生き延びました。ここに制作者のメッセージが込められていると思います。生き残るには、欧米型の感覚だけでもダメ、日本の伝統(武士道)だけでもダメ、両方を兼ね備えていくのがよいと受け取れます。

生き延びたトム・クルーズが天皇に「どう死んだかではなく、どう生きたかをお話しします」と言うシーンはなかなか深いです。急増する自殺者に「どう死ぬか」ではなく、「どう生きるか」を考えよというメッセージとも受け取れます。しかし、大切なのは「どう生きるか」よりさらに踏み込んで「なぜ生きなければならないのか」を伝えることだと思います。

その理由がはっきりしてこそ、科学文明も武士道精神も生きてくるのです。

16年4月16日追記

『ラストサムライ 特別版 DVD 2枚組』

早くも2枚組の特別版 DVD が出るそうです。価格設定もリーズナブルですね。

9 Comments

  1. 私はラストサムライ評を見たかったのですが貴方の妄想からなる駄文に時間を費やした気がします。製作者側が言う自分の言葉に責任をもつ武士と言う点をどう思われますか?貴方の想像だけの評が世界中誰もが見る可能性のあるウェブ上で公開されていることをひどく残念に思います。日本の恥です。

    Comment by フミカさんへ — 2004-01-19 07:07

  2. 私はこの批評を書くにあたって、ラストサムライの批評・感想・解説などを数十見ています。この映画を見ていろいろな意見・感想を持ちましたが、敢えて他のサイトと同じ意見を書かないようにしました。そのような事実をわかった上で言っているのでしょうか。

    私の評が受け入れられないのであれば、ただ貶すのではなく、自分の意見を書いたらいいでしょうに。そのほうがよほど誰もが閲覧できる WWW にとって有益な情報となるでしょう。あなたの書き込みは WWW に何ら利益をもたらしませんよ。

    自分と違う意見は受け入れられないのでしょうね。きっと自分妄想の世界に浸っていたいのだと思います。そうであれば同意見の人たちの狭い世界で馴れ合っている方が幸せでしょうに。

    それとも、「製作者」側の言葉とやらを振りかざしているということは、あなたは映画制作者様なのでしょうか。だとすれば大変光栄ですが、是非とも公開プロキシ経由の匿名書き込みではなく正々堂々と名乗っていただきたいものです。そんな状態で「自分の言葉に責任をもつ」なんて私には恥ずかしくて言えませんけどね。

    ちなみに「製作」はもっぱら「道具や機械を使って物を作ること」です。絵画や映画など芸術作品を作る場合は「制作」の方が適切です。

    Comment by 津田ふみか2004-01-20 09:53

  3. ラストサムライを鑑賞して皆さんの感想をしりたく
    このページを拝見しました。
    したがって通りすがりのものですが、
    これはどう見たって「津田ふみか」さんのご立腹に
    賛同します。いろいろな考えがあって当然ですが、
    低次元の誹謗ですねこれは。

    Comment by 通りすがりのものです — 2004-02-12 00:06

  4. はじめまして、
    2月に入って、やっとラストサムライ見ました。
    ひどく感動して、この気持ちをいろんな方と共有したいと思い、
    ネットを開きましたが、やはり日本が舞台の映画というのもあるせいか、
    厳しい意見のHPが多かったです。
    私は、今回の映画はハリウッドで作られたものと考えて見ていたので、すごいなぁ~と思わされるばかりでした。
    ふみかさんも冒頭でおっしゃっていましたが、私も当初『パールハーバー』のイメージがあったので期待はほとんどしていなかったのですが、迫力満点でしたね。
    渡辺謙の存在感も圧巻されました。
    私の中で主役は渡辺謙でしたしね。(笑)
    時代の節目になり、武士という身分は必要となくなるが、武士として生きてきて、またこれからも武士としてしか生きられない。彼らの生き様に心打たれました。
    日本の時代ものの映画・ドラマを見ても、おかしいところはたくさんあるはず。
    それを、アメリカ人がここまで仕上げてきた。
    彼らの熱意とハリウッドのスケールの大きさに今回は驚かされました。

    Comment by けいちゃん — 2004-02-16 14:58

  5. はじめまして。
    やっとラストサムライを鑑賞することが出来ました。
    感想はちょっと10段階評価で6位かな?
    確かに渡辺謙は迫力がありましたが、どうにも不自然さがありました。(言葉ではどうも表現できませんが。)
    他には、やはり撮影場所が海外ということもあり若干背景に違和感があったり(植物等)あきらかに時代的におかしい装備、やはり外国の方が主演を演じるに対する違和感。(ハリウッドなので当然といえば当然ですが)
    最も気に入らないのが武士道に対する考え方。
    ガトリング砲に突っ込むのが果たしてかっこいいのでしょうか?
    どうも武士道(大和魂)=無謀な突撃と見られている感じがします
    正直言ってやっていることは太平洋戦争末期の日本兵と同じであり
    あのような行為を美化するのはどうかとおもいます。
    と、ここまでケチをつけておきながら言うのもなんですスタッフやトムクルーズの本気度は感じられますし、日本人なら大抵の人が楽しめるのではないでしょうか?少なくともパールハーバーよかマシですw

    Comment by ガス — 2004-02-28 12:49

  6. 随分前にこの映画を見てきましたが、震えるような感動がありました。世界が嫉妬してもおかしくないくらい、サムライが格好良く描かれてました。でも、歴史的にみてもサムライの生き様は特異で、民族や文化を超えても通じる(と思われる)「サムライの哲学」は誰が見ても共感でき、憧れるのではないでしょうか。
    この映画をみて、あれこれけちをつけたがる人は、ひょっとして
    眩しすぎる男達に嫉妬しているかもしれませんね。
     確かに映画ですから、構成的には一部不自然なところありましたけど、歴史に詳しくない私は、勝元のモデルとなっている、西郷隆盛に関するホームページ”敬天愛人”にざっと目を通しました。死に様も、政府軍の流れ弾にあたって倒れたところを、仲間の一人に最後は自分の首を切り落とさせるんですが、「ラストサムライ」は歴史からだいぶかけ離れている内容にはなってないなと感じましたので、映画の内容に不自然さを感じる方は、一度、西郷隆盛の歴史を学んでみて下さい。そのあと、おかしいところを探してみたら、面白いかもしれませんよ。

    Comment by まゆ — 2004-04-7 03:55

  7. 正直なところ、あまりいい映画とは思えません。外国人の視点からみるとおもしろいのかもしれませんが、日本人である私からみると共感できるものが少ない。もう少し、渡辺謙がやむにやまれず、官軍相手に戦わなければならなくなった過程や、トムクルーズが、渡辺謙たちと命をかけてまでともに戦おうと決心する過程をより説得力のあるものにする必要があったとおもいます。映画のえがいている時代考証などもしっかりしていません。すぐに外国人の作ったものと感じる内容です。日本のことを描いているのではなく、空想の中の世界としてもいまいちです。もう一度みたいとは思いませんでした。なぜ、こんなに評判がいいのか、私の感性がおかしいのか知りたいです。

    Comment by ラストサムライ — 2004-05-17 13:19

  8. 信忠がいい!!あとBOB(笑)彼は時代劇の切られ役の名人さんですが素晴らしい☆私の中でトムクルーズはいまいちパッとしなかったのですが。

    Comment by 蓮 — 2004-05-20 15:23

  9. テロ被害者が、トム・クルーズを非難

    昨年の話ですが、テロ被害者が、トムの“インチキ療法”を非難
    という記事がありました。『ラストサムライ』『ミッション・インポッシブル』『マイノリティ・リポート』のトムクルーズが、911テロの被害者により非難されているとのこと。
    9.11米国同時多発テロで被害者….

    トラックバック by 親鸞会 映画サークル Movies2006-01-28 22:11

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