手嶋龍一+佐藤優『インテリジェンス武器なき戦争』
『インテリジェンス 武器なき戦争』は、いわゆる鈴木宗男事件で逮捕起訴され、512日間の拘留を余儀なくされた外交官・佐藤優と、NHK ワシントン支局で9・11事件の報道を行ない、海老沢騒動の煽りで更迭され、独立した手島龍一という外交問題のスペシャリストによる対談集。インテリジェンスの入門にぴったりです。
インテリジェンス (intelligence) は直訳すれば知恵や知能といった意味になり、IT の世界では単なる情報 (information) や知識 (knowledge)とし区別され、人工知能やエージェント理論などで使われる言葉です。しかし本書のインテリジェンスとは、諜報やそれに関する防諜・宣伝・工作の意味であり、本書で単に「情報」といっても、それは国家や外交に関する、時には機密の情報であり、周到に分析されたものを指します。
本書ではラスプーチンこと佐藤優がどのような経緯で拘留されたかや、北朝鮮問題などインテリジェンスがいかに外交問題や戦争に深く関わっているか、そして大韓航空機撃墜事件など日本のインテリジェンス活動の成功例・失敗例を交えながら、対談形式で生々しいインテリジェンスの世界を紹介しています。そして日本の外務省をはじめとする組織が、いかに情報を扱う組織として弱体しているかを嘆く憂国の書となっています。
そして、本書の内容はなにも外交問題だけではなく、会社などの組織についても当てはめることができる部分があり、ビジネスマンにも参考になる部分が多いと思います。
一例を挙げれば、組織にしがみつくしかない人間は、生き残りや復讐のためにメチャクチャなことをやるんです
、みんな誉められるのは好きだけど、叱られるのは嫌いなんです。でもインテリジェンスの仕事は、ときに叱られたっていいんですよ。結果として国益が守られればいいわけですから
などの名言は、国を会社や組織に置き換えて読むと、なるほどその通りと思わずにいられません。
もっとも本書で取り上げられている内容の真贋はわかりません。行間を読まなければならない部分もあれば、建前と本音を見分ける知恵も必要になってくるでしょう。二人の誉め合いが鼻につくという人もあるようですが、これは腹の探り合いです。なにしろ筆者らはインテリジェンスのプロなのですから。そのあたりのことも念頭に置きつつ読むと楽しめると思います。
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