エイミー・トムスン『緑の少女』 | THE COLOR OF DISTANCE by Amy Thomson
1996 年に上下巻で刊行されたエイミー・トムスンの『緑の少女』。当時エイミー・トムスンは『ヴァーチャル・ガール』が SF 界で評価されていて、私も『ヴァーチャル・ガール』を読んだ後に『緑の少女』を購入し、読破に挑戦しました。
しかし、冒頭から私たちの住む世界とは全く異質な文明をもった種族の用語がたくさん出てきて、とりあえず読む気を失ってしまいました。タイトルと表紙イラストも偽りあり(?)で、主人公の女性は三十路に達しており、少女というには無理があるように思えました。
そんなわけで 10年以上も「積ん読」状態だった本書に、ようやく取り組みんでみました。がんばって読み進めていくうちにその面白さに引き込まれていきました。今日では絶版で手に入りにくいかもしれないですが紹介します。
内容はいわゆる「ファーストコンタクトもの」なのだけれど、テンドゥという科学文明はすすんでいないが高度な生命工学をもつカエルのような異種族に、主人公のジュナはその体を変えられてしまう。その異種族と人間の生態・文化の違いから来る主人公の苦悩や葛藤、数千年の時を生きる賢者達との出会いなど驚きなどが本書の中心。ただ見たこともない世界を描くだけではなく、未経験の世界に入り込んだ上での様々な経験を描いています。
本書を読み進めていくと、自分もテンドゥ側にも感情移入ができるようになります。異星人とのコンタクトによる変化は、ジュナだけでなく異質な文明のもたらされたテンドゥ側にもやってきます。本書はテンドゥ側のヒロイン的存在のアニトの成長物語でもあり、「緑の少女」とはアニトのことだと解釈することもできます。
読み始めた当初はとても違和感を覚えたテンドゥたちにも、終盤には愛着を覚えるくらいにはまってしまいます。続篇の構想もあるという本書ですが、その後の話は聞きません。その続篇である『Through Alien Eyes』や、新作の『Storyteller』 の邦訳が出ないのはやはり本書の評判がいまひとつだったということなのでしょうか。
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