『新聞記者という仕事』──新聞と世論の裏側
夏頃に刊行された新書本ですが、読んだのは最近ですが良い内容なので紹介します。
タイトル通り新聞記者の仕事について書かれた本で、日頃読んでいる新聞がどのようにして作られるのか、その記者の仕事についていろいろと知ることができます。たとえば、政治の取材をするための記者クラブとか、報道が解禁される時刻を定めた報道協定はどういうものか、その弱点もわかりやすく書かれています。
しかし、本書最大の特徴は、朝日新聞の論説委員、社会部長、出版局長などを歴任した著者が、ジャーナリズムの原点に立ち戻って、「新聞よ、死ぬな」と、現代の新聞に警鐘を鳴らしているところにあります。
著者の主張、ジャーナリズムとは権力に対する監視機能である
ということで一貫しています。そして産業としての新聞の衰退ではなく、ジャーナリズムとしての新聞の衰退を嘆いています。
戦後から湾岸戦争、同時多発テロ、イラク戦争と至る過程で新聞のジャーナリズム精神が如何に衰えていったかのくだりは、なかなか読み応えあります。ほかにも珊瑚事件などの捏造報道や、インターネットからの記事無断盗用についても触れられており面白いです。しかし何より感銘を受けたのは、著者の戦争に対する認識です。
瞬時に三〇万人が死傷したヒロシマ・ナガサキ、一〇万人が死んだ東京大空襲、いずれも許し難い非道な行為だが、米国に報復しようと考えている日本人がいないのは、終戦時、日本は感情的な怨恨から離れて、「戦争そのものが悪なのだ」と一段高いところに考えを「昇華」させたからだろう。
このように、テロの報復が繰り返される世界において、日本の新聞が戦争容認ではなく、平和を訴えることが重要だとしています。まさにその通りだと思います。非常に勉強になり、考えさせられた一冊です。
コメントはまだありません
No comments yet.
Sorry, the comment form is closed at this time.