下山 進『勝負の分かれ目―メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』
ライブドアのフジテレビ乗っ取り騒動も一段落しましたが、ライブドアの堀江社長は1年以上前から、「ライブドアをITとメディアと金融のコングロマリットにする」と言っていたそうです。ご存じのようにライブドアはウェブサイト制作から始まり、ポータルサイトの運営などインターネット関連事業の会社です。しかし実際は、収益のほとんどが投資、証券などの金融事業からもたらされていることは承知の事実です。
ヤフーや楽天も金融事業に参入していますから、これは驚くことではないのですが、なぜ堀江社長が放送というメディアにこだわったのか、気になりました。それは、この『勝負の分かれ目―メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』にヒントがありました。
本書は、ロイター、時事通信、日本経済新聞社などの歴史と、その実態を明らかにした渾身のドキュメンタリーです。日米欧を舞台に4年の歳月をかけて書き下ろされたノンフィクションです。ロイターや時事通信は、一般の人が思っているような、ただの通信社ではありません。そこでは報道・ジャーナリズムの概念が、他の新聞社などとは大きく違うものだと知らされます。
また半世紀にわたる金融とメディアの歴史を追っている中で、当初の電算化が遅れ、日本が世界から取り残されていく様などは、今日でもいろいろと思い当たる日本独自の規制や、保守的、排他的な文化が悪影響を及ぼしていることが分かります。そして、否が応でもアメリカ型の競争社会に巻き込まれ、飲み込まれていく日本企業の姿も浮き彫りされています。
『勝負の分かれ目―メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』は1999発刊と少し古い本です。しかし、読んだ価値は充分にありました。メディアと金融を語る上で外せない必読書だと思います。現在は文庫化もされていますが、単行本の方が中古、古本で安く手に入りますのでお薦めです。
コメントはまだありません
No comments yet.
Sorry, the comment form is closed at this time.