Google の日本戦略と Gmail への懸念の広がり

2004-4-20 18:01
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本日4月20日より、21日まで「Search Engine Strategies 2004」というイベントが新宿で開催されています。このイベントでの、米 Google の副社長 Wayne Rosing 氏による基調講演がニュースになっています。『グーグル、日本語検索精度向上を目指す研究開発センターを渋谷に設立』という記事から、Google の今後の日本戦略を垣間見ることができます。

米Googleの日本法人であるグーグルは20日、東京・渋谷に研究開発センターを設立すると発表した。(中略)

日本の研究開発センターの最大の目的は、“日本語による検索精度の向上”であるとしており、「日本語検索における最高の検索エンジンとして、認知されることが最も優先順位の高いことだ」と説明した。したがって、Gmailなどの未だ日本語化されていないアプリケーションの日本語作業も行なうものの、優先度的には2番目以降になるという。

昨今注目を集めている Gmail よりも、日本語による検索精度向上に力を入れる理由は何でしょうか。これは Yahoo! Japan との契約切れが近いことを意味していると思います。日本でも米 Yahoo と同様に Yahoo! Search Technology を導入するのは時間の問題です。検索エンジンの精度を高め、YST よりも利用しやすい検索エンジンを提供することで、利用者離れを避けたいのでしょう。

一方の Gmail については、ITmedia では、「Gmailの日本展開予定に変更なし」という記事も出ています。Gmail の日本展開予定は発表されていたでしょうか? ともあれ、日本でも展開する予定があるようです。Gmail については、メールの内容をスキャンして適切な広告を表示させる手法について、プライバシーの懸念が広がっています。これに対しては、

4月1日に開始された無料のメールサービス「Gmail」のプライバシー問題については、「当社は、ユーザーのプライバシーを最重要項目として取り組んでいる企業だ」と前置きし、「プライバシーに関わるログは保存していない上に、大量のメール保存に関しても、データロストのリスク低減のためにミラーリングなどは行なっているものの、必要以上のデータ保存やログ保存は行なっていない」とコメントした。

とあります。とはいえ、以前見たCNET Japan の記事では、Gmail は削除したメールもシステムから完全に削除できないそうですが、これはどうなったのでしょうか。

もう1つ、このサービスが非難を浴びているのは、ユーザーが受信メールを削除した後もコピーがシステム内に保存されてしまうという点だ。

コピーが保存されるというのがよく分からないのですが、Google 独自の分散ファイルシステムの仕様・都合によるものなのか、検索結果のキャッシュのようなものがあるのか。

さて、Gmail に対するプライバシーの懸念は、主にメールがスキャンされるという部分に集中しています。ところが、すでにスパムメールフィルタや、ウィルスチェックなどによってメールはスキャンされています。企業などでは情報漏洩防止のために、全従業員のメールをスキャンしているところもあります。いずれもプログラムが作業しており、人が一通一通目を通しているわけではありません。Gmail も同じです。

しかし、Gmail には拒絶反応を示すというのは、なかなか面白い現象です。無料メーリングリストに挿入されるような広告もありますが、これは多くの人が受け入れているでしょう。すべて同一の広告がランダムに挿入されるからです。すべて同一の広告なら問題なくても、ターゲット広告には拒絶反応を示すわけですが、何が違うのでしょうか。

私も以前ウェブ上で、Cookie によるターゲット広告に遭遇したときも「気持ち悪い」と感じたものです。そのときは某ポータルサイトの検索エンジンでドメインについて調べていたのですが、その後しばらくの間は、そのポータルサイトにドメイン取得関連の広告ばかりが表示されていました。乗用車を購入するために検索した際も、似たような現象に遭遇しました。

これは「人が盗み見る」とか「プログラムが機械的にスキャンする」という技術面の問題ではなく、「自分の好みを知らない人にいつのまにか知られてしまう」という実に感覚的な問題なのです。実は、知られてもいい人には、好みを知られても問題ないのです。知られたくない人に知られてしまうから問題なのです。そこがプライバシー問題の難しいところです。Google や広告業者には隠された性癖を知られたくないというのが多くの人の率直な感想なのでしょう。

最後に、Gmail のプライバシーの問題についてあまり語られていない部分があります。それは、Gmail が HTML メールを送信するということです。HTML メールにウェブ・ビーコンを埋め込むと、特定の個人がメールを読んだかどうかが分かります。メールマガジンの開封率測定などにも利用されています。私はターゲット広告よりも、HTML メールであることに注意しなければならないと感じています。

Gmail から送ったメールがすべて HTML メールであるということは、将来的には宛先の人にもターゲット広告が表示されたり、ウェブ・ビーコンによるプライバシー侵害の可能性が考えられるということです。(現在も受信した人にも広告が表示されるという記事もあります。)場合によってはウィルスに利用されてしまう可能性もあります。しかし多くの人が HTML メールの危険性を知らないために、この点が見過ごされているように思います。

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